どちらかと言えば、ガムは飲み込む派。なんか惜しいぜ、押居A太です。
ブロローン、キュルルー。
ボクは今、アクセル全開の真っ赤なスポーツカーの助手席にいる。
アクセルを吹かしているのは会社一カッコいい先輩、出利さんだ。
これから出利さんの家に向かうのだけれど、ちょっとこの人、車に乗ると人格が変わるタイプなのかな。
で、出利さん、ちょっと怖いっス。
「オレの場合、ある意味、この車のために家探ししたようなもの」という出利さん家の駐車場は、当然マンションの敷地内。
コの字型の建物に囲まれた、外から見えにくい設計だ。
駐車場付きといっても、普通の空き地みたいなものから、建物地下の立体駐車場、セキュリティ万全の暗視カメラを設置したものまで幅広い。出利さんが選んだのは、自分の部屋から見えやすい駐車場。
「いつも一緒にいたいから…」と照れながら話す姿が、…ちょっと怖い。
いつもは温厚な先輩も、車のこととなると感情的だ。
「もし、誰かがオレの車にキズでもつけやがったら…」ど、どうするんですか、出利さん?物騒なこと言わないでくださいね?
「たぶん、泣く」オイオイ、泣き出しちゃったよ。「よーし、今日から毎晩、駐車場をパトロールするぞ」。
というワケで、夜な夜な駐車場をぐるりと廻り愛車を見張っているのだそうだ。
「おいA太、パトロールして正解だったよ。最近、駐車場に怪しい人影を見たという話が多数あるらしい。
絶対オレが捕まえてやる」。
…その人影って、もしかして出利さんのことじゃ…。