ピザって一〇回言ったあと、グッと飲み込んで緊張ほぐしちゃった、なんか惜しいぜ、押居A太です。
こないだ甥っ子のケンイチが来たときの話です。
こっちの大学が決まって、ひとり暮らしを始めたいというので一緒に部屋探しを。
ちなみに将来の夢はパイロットという、けがれなくスクスク育った、一八〇cm男の子です。
まずは一件目。ワンルームの定番、ユニットバスに乗って冒険だ。
いやいやケンイチ、乗り物好きだからってユニットバスには乗れません。
これはお風呂とトイレがセットになってる、いわばひとり暮らし向けの合理的な物件だ。
「分かったよAちゃん。でももっと狭い部屋でいいんだけど?」
そっか、都会の家賃相場に怖じ気づいたかな。
で、次に向かったのがいわゆる木造アパート。
ボクの学生時代の『木造』と比べると格段に美しいんですけど、やっぱなんか懐かしいなあ。
ふとしたときに、お隣さんの音がわずかに聞こえたりして…、ちゃんとみんな生活してるんだ、とか。ひとりぼっちじゃないんだなんて、ちょっぴり涙ぐんだりして。
…おおいケンイチ、そんなに隣のベランダを覗き込むんじゃない!変な人だと思われるぞ!
「Aちゃんも壁に耳近づけすぎ…」。
そして結局その日に見学した中で一番狭い部屋、四畳半アパートが彼のお気に入り。
理由は、テレビ、オーディオ、パソコン、さらに冷蔵庫まで、すべてをふとんの上から触れそうなコンパクトサイズだから。
「コックピットぽいよね。ここ」だそうだ。